我が家の BigQuery による台所事情分析

Contents
  1. TL; DR
  2. 対象読者
  3. ざっくり紹介
  4. 何が嬉しいの?
  5. Money Forward でええんちゃうの?
  6. アーキテクチャ
  7. 課題
  8. 無料なの?
  9. ETL フレームワーク bqloader
  10. bqloader 概要
  11. bqloader 使い方
  12. BigQuery による台所事情分析の始め方
  13. Service Account 作成
  14. BigQuery Table 作成
  15. Cloud Storage Bucket 作成
  16. Cloud Functions 実装
  17. Function デプロイ
  18. CSV アップロード
  19. BigQuery 確認
  20. ダッシュボード作成
  21. おわりに

弊家では銀行やクレジットカードの明細を BigQuery に取り込んでダッシュボードを作ったりしています。 また、そのために作った BigQuery 向けの Go 製 ETL フレームワークを OSS として公開しました。 本記事ではざっくりどんなもんかを紹介して、どう作るのかを説明します。

Google Cloud Platform Advent Calendar 2020 の 13 日目の記事です。

Google Cloud Japan の Customer Engineer の Advent Calendar もぜひご覧ください。

TL; DR

  • 明細が BigQuery にあると、可視化もできるしアラートも出せるし、まぁなんでもできて便利
  • 銀行明細レベルのデータならほぼ無料で保存、ETL、分析できる
  • ETL フレームワーク bqloader を OSS として公開したから使ってくれよな 💪

説明しないこと:

  • 我が家の台所事情
  • BigQuery のクエリの書き方

対象読者

  • GCP を触ったことがある人
  • お金まわりを分析したいと思っている人
  • 身近な題材で BigQuery を触ってみたい人

ざっくり紹介

何が嬉しいの?

BigQuery でできることができるようになります。 で終わらせるのもアレなので、弊家でのユースケースを列挙します。

  • ダッシュボード
    • 資産推移
    • 出費分析
    • でかい出費ランキング
  • アラート (銀行残高、クレジットカード)
  • 予算管理

例えばダッシュボードはこんな感じです。(記事用に加工してます)

dashboard

BigQuery を使うことで、手動でやってたことを自動化できるようになったり、今までできなかったことができるようになったりしました。 SQL を書けばほしいデータをほしい形ですぐに手に入れることができて、それを簡単に様々なシステムと連携できるので超便利です。 おかげで自動化もできたし、良い感じのダッシュボードも作ることができて節約を頑張れそうです。

Money Forward でええんちゃうの?

いいです 😂

本記事の内容は劣化版 Money Forward の再実装と言える部分もあります。

Money Forward はとてもいいサービスなので弊家でも使っていますが、かゆいところに手が届かなかったり、使いたい機能が有料だったりしたので自分でも作りました。

自分で作ると手間はかかりますが Money Forward 以上のやりたいことがだいたい実現できるようになります。 BigQuery でクエリを書いて好きな結果を得られるというのは大きいですね。

アーキテクチャ

こんな感じです。

architecture

課題

大きな課題が 2 点あります。

  • CSV のダウンロード/アップロードが手動
    • 銀行やクレジットカードの明細の CSV を手動でダウンロードしてアップロードしています1
  • リアルタイム性がない
    • CSV を月イチで手動アップロードしてるので、リアルタイム性がありません

以前はスプレッドシートに手入力していた部分もあったので自分としては手間は減ってるし、できることは増えたし、お金はかかっていないしでハッピーなんですがめんどくささは残ります。 銀行が API 公開してくれたらいいんですけどね。

無料なの?

無料ではないです。毎月 1 円請求が発生しています。 Cloud Functions のコンテナイメージを管理している Container Registry のバックエンドの Cloud Storage に料金がかかっています。2

下の画像は実際に弊家で使っているプロジェクトの Billing Report です。 (Subtotal は 4 ヶ月分が加算されて 4 円と表示されています)

billing report

Cloud Storage や Cloud Functions や BigQuery は 無料枠 におさまっています。 もし既に無料枠を使い切っている場合は料金が発生します。それぞれ以下のように無料枠があります。

  • Cloud Storage: 5GB-月 (us-east1, us-west1, us-central1)
  • Cloud Functions: 200 万回/月
  • BigQuery: 1TB クエリ/月

Cloud Storage の無料枠はリージョンが限定されています。 リージョンが異なると余計なネットワーク料金が発生したりするのでリージョンを揃えておくのもポイントです。 弊家ではすべてを使えるリージョンとして us-east1 を選択しました。

銀行の明細は 1 ヶ月分でせいぜい数 KB、クエリもたかがしれてるのでなかなか無料枠を超えることはなさそうです。

ETL フレームワーク bqloader

bqloader 概要

bqloader は Go 製のシンプルな ETL フレームワークです。 弊家の ETL をフレームワークとして切り出したものになります。 以下のような特徴があります。

  • 1 行を 1 行への変換に特化
  • ユーザは行単位の変換ロジックのみ実装
  • 簡単な設定で文字コード変換、不要な行のスキップ、成功・失敗通知が可能
  • 今のところ Cloud Storage、Cloud Functions、BigQuery 専用3
  • 1 つの Function で複数種のデータに対応

Go で実装することになるので Go の知識はあった方がいいですが、なくても Hello, world ぐらいできればサンプル見ながら実装できるんじゃないでしょうか。

以下のような利点があります。

  • ほぼ無料で使える
  • 必要最低限の機能しかない
  • Go で書ける
  • 複数種のデータの ETL を一箇所で管理できる

bqloader 使い方

サンプルプロジェクト を見てもらうのがはやいです。 このサンプルの中で Service Account の作成や Function のデプロイ、BigQuery への ETL まで一通りカバーしています。

以下ではフレームワークのさわりだけ丁寧に説明していきます。 詳しくは godoc やサンプルを見てください。

まず import します。

import "go.nownabe.dev/bqloader"

保存先テーブルごとに bqloader.Handler を設定します。 Cloud Storage にアップロードされたファイルが Handler の Pattern に一致する場合に処理されてテーブルにロードされます。 Handler を複数定義すればひとつの Pattern に複数の Handler を対応させることもできます。

handler := &bqloader.Handler{
  Name:     "main_bank",          // 通知などで使われる
  Encoding: japanese.ShiftJIS,    // 入力ファイルをShiftJISとして扱う
  Parser:   bqloader.CSVParser(), // 入力ファイルをCSVとして扱う

  // 先頭から1行を無視する (ヘッダのスキップ)
  SkipLeadingRows: 1,

  // この正規表現にマッチするパスのファイルを処理する
  Pattern: regexp.MustCompile("^main_bank/"),

  // ロード先のBigQueryテーブル
  Project: "my-project",
  Dataset: "my_dateset",
  Table:   "main_bank",

  // 後述
  Notifier:  notifier,
  Projector: projector,
}

変換のコアは projector です。projector は行単位の変換を実現する関数です。

/*
  例えば次のようなCSVの各行をBigQueryが理解できる形式に変換する。

  日付,内容,出金金額,入金金額,残高
  2020年12月13日,お賃金,0,"180,000","200,000"
  
  rowに1行が入る。上記の例だと次のようになる。
  row == []string{"2020年12月13日", "お賃金", "0", "180,000", "200,000"}
*/
projector := func(_ context.Context, row []string) ([]string, error) {
  // 日本語の日付から、BigQueryが解釈できる日付に変換する
  t, err := time.Parse("2006年01月02日", row[0])
  if err != nil {
    return nil, fmt.Errorf("time parse error: %v", err)
  }
  row[0] = t.Format("2006-01-02")

  // 数値列のカンマを削除する
  row[2] = strings.ReplaceAll(row[2], ",", "")
  row[3] = strings.ReplaceAll(row[3], ",", "")
  row[4] = strings.ReplaceAll(row[4], ",", "")

  return row, nil
}

notifier は通知です。

notifier := &bqloader.SlackNotifier{
  Token:   "xxxx",
  Channel: "#bqloader",
}

この Handler を利用して Cloud Functions のエントリーポイントとなる関数を実装します。3

func MyFunc(ctx context.Context, e bqloader.Event) error {
  loader, _ := bqloader.New()

  // 上述のmain_bank Handler
  loader.MustAddHandler(ctx, handler)

  // 別のHandlerも登録できる
  loader.MustAddHandler(ctx, creditCardHandler)

  // イベントを処理する
  return loader.Handle(ctx, e)
}

Cloud Storage へのファイルアップロードなどのイベントで実行されます。4

こんな感じで bqloader による関数を Cloud Functions にデプロイして、対応するバケットにファイルをアップロードすればデータが BigQuery にロードされます。

BigQuery による台所事情分析の始め方

では銀行の明細を BigQuery にロードする ETL システムを構築してダッシュボードを作ってみましょう。

銀行の明細は このサンプル を利用します。このデータを多くの銀行に倣って ShiftJIS の CSV として扱います。

前提として、Google Cloud のプロジェクトが必要になるので用意してください。 以下ではプロジェクト ID が GCP_PROJECT 環境変数にあるものとして説明します。 また、Go 環境と Google Cloud SDK はセットアップ済みとします。

作成するリソースはそれぞれ次の名前を使用します。

  • Service Account: bqloader
  • BigQuery Dataset: bqloader_dataset
  • BigQuery Table: main_bank
  • Cloud Storage Bucket: gs://$GCP_PROJECT-source
  • Cloud Functions: bqloader-func

今回ダッシュボードには無料で簡単に使える Data Studio を使います。

Service Account 作成

Cloud Functions 用の Service Account を作ります。

gcloud iam service-accounts create bqloader --project $GCP_PROJECT

後で何回か使うので、Service Account の環境変数も設定しておきます。

SERVICE_ACCOUNT=bqloader@$GCP_PROJECT.iam.gserviceaccount.com

BigQuery の Job を実行する権限が必要になるので roles/bigquery.jobUser Role を付与します。

gcloud projects add-iam-policy-binding $GCP_PROJECT \
  --member serviceAccount:$SERVICE_ACCOUNT \
  --role roles/bigquery.jobUser

BigQuery Table 作成

スキーマの JSON を作成します。

cat <<EOF >schema.json
[
  {
    "name": "date",
    "type": "DATE",
    "mode": "REQUIRED"
  },
  {
    "name": "description",
    "type": "STRING",
    "mode": "NULLABLE"
  },
  {
    "name": "withdrawal_amount",
    "type": "NUMERIC",
    "mode": "NULLABLE"
  },
  {
    "name": "deposit_amount",
    "type": "NUMERIC",
    "mode": "NULLABLE"
  },
  {
    "name": "balance",
    "type": "NUMERIC",
    "mode": "REQUIRED"
  }
]
EOF

BigQuery の Dataset と Table を作成します。

# Dataset作成
bq --location us-east1 mk --dataset $GCP_PROJECT:bqloader_dataset

# Table作成
bq mk --table $GCP_PROJECT:bqloader_dataset.main_bank schema.json

先程作った Service Account に書き込み権限を付与します。5

bq add-iam-policy-binding \
  --member serviceAccount:$SERVICE_ACCOUNT \
  --role roles/bigquery.dataEditor \
  $GCP_PROJECT:bqloader_dataset.main_bank

Cloud Storage Bucket 作成

生データを保存する Bucket を作成します。 Cloud Functions のトリガーとなるイベントを発行するソースにもなります。

gsutil mb -p $GCP_PROJECT -l US-EAST1 gs://$GCP_PROJECT-source

Service Account に読み込み権限を付与します。

gsutil iam ch \
  serviceAccount:${SERVICE_ACCOUNT}:roles/storage.objectViewer \
  gs://$GCP_PROJECT-source

Cloud Functions 実装

まずは Handler を実装します。 今回は 1 つですが、Handler が増えたときにメンテしやすいように Handler ごとにファイルをわけておきます。

// main_bank_handler.go

package myfunc

import (
        "context"
        "fmt"
        "os"
        "regexp"
        "strings"
        "time"

        "golang.org/x/text/encoding/japanese"

        "go.nownabe.dev/bqloader"
)

func cleanNumber(n string) string {
        n = strings.ReplaceAll(n, "¥", "")
        n = strings.ReplaceAll(n, ",", "")

        return n
}

func mainBankHandler() *bqloader.Handler {
        projector := func(_ context.Context, r []string) ([]string, error) {
                t, err := time.Parse("2006年01月02日", r[0])
                if err != nil {
                        return nil, fmt.Errorf("time.Parse error: %v", err)
                }

                r[0] = t.Format("2006-01-02")
                r[2] = cleanNumber(r[2])
                r[3] = cleanNumber(r[3])
                r[4] = cleanNumber(r[4])

                return r, nil
        }

        return &bqloader.Handler{
                Name:            "main_bank",
                Pattern:         regexp.MustCompile("^main_bank/"),
                Encoding:        japanese.ShiftJIS,
                Parser:          bqloader.CSVParser(),
                Projector:       projector,
                SkipLeadingRows: 1,

                Project: os.Getenv("GCP_PROJECT"),
                Dataset: "bqloader_dataset",
                Table:   "main_bank",
        }
}

エントリーポイントとなる関数を実装します。

// func.go

package myfunc

import (
        "context"

        "go.nownabe.dev/bqloader"
)

var loader bqloader.BQLoader

func init() {
        loader, _ = bqloader.New()
        loader.MustAddHandler(context.Background(), mainBankHandler())
}

func MyFunc(ctx context.Context, e bqloader.Event) error {
        return loader.Handle(ctx, e)
}

Cloud Functions は Go Modules を理解してくれるので go.mod を作ります。

go mod init
go mod tidy

Function デプロイ

必要な API を有効化します。

gcloud services enable \
  --project $GCP_PROJECT \
  cloudfunctions.googleapis.com \
  cloudbuild.googleapis.com

デプロイします。

gcloud functions deploy bqloader-func \
  --project $GCP_PROJECT \
  --region us-east1 \
  --runtime go113 \
  --trigger-resource $GCP_PROJECT-source \
  --trigger-event google.storage.object.finalize \
  --entry-point MyFunc \
  --service-account $SERVICE_ACCOUNT \
  --set-env-vars "GCP_PROJECT=$GCP_PROJECT"

CSV アップロード

CSV ファイルをアップロードして、Cloud Functions にデプロイした bqloader を起動します。

curl https://blog.nownabe.com/files/2020/12/13/sample.csv \
  | gsutil cp - gs://$GCP_PROJECT-source/main_bank/sample.csv

BigQuery 確認

うまくいけば、ShiftJIS の銀行明細 CSV がいい感じに変換されて BigQuery にロードされています。 bq コマンドで確認します。

bq --project_id $GCP_PROJECT \
  query --nouse_legacy_sql \
  "SELECT * FROM $GCP_PROJECT.bqloader_dataset.main_bank LIMIT 5"

ダッシュボード作成

最後に Data Studio6でダッシュボードを作成します。 が、Data Studio は操作が GUI で説明がめんどくさいのでフィーリングでやってみてください。 画面をポチポチやっていけば、なんとなく BigQuery の銀行明細データを読み込んでグラフが作れそうな雰囲気は感じてもらえると思います。

適当ですがこんな感じのダッシュボードを作れます。

data studio

おわりに

やってみると意外と簡単で楽しいのでぜひやってみてください。 弊家では今後もどんどんデータを増やして Data Driven な家庭を目指していきます。

あ、nownabe/go-bqloader に Star くれると嬉しいです!⭐

Footnotes

  1. アップロードはコマンド一発 gsutil rsync なので楽なんですが。 ↩

  2. コンテナイメージは Cloud Functions によって古いものは自動で削除されるので、何回デプロイしても 1 円で済むと予想しています。 ↩

  3. Pull Request お待ちしています! ↩ ↩2

  4. イベントについての詳細は Cloud Functions のドキュメント を参照してください。 ↩

  5. bq add-iam-policy-binding でエラーが出る場合は gcloud components update してみてください。 ↩

  6. 大人の事情で日本語だとデータポータルになってます。 ↩