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マンタローに勇気をもらって Google Cloud を辞めた話

Posted on Jun 17, 2023

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はじめに

昨日、Google Cloud のカスタマーエンジニアとしての最終出社日でした。退職日は 6 月末になります。いわゆる退職エントリです。

次はソフトウェアエンジニアとしての転職が決まっています。入社エントリはまた別で書ければと思っています。

本記事は、

  • Google Cloud で何をしたか
  • Google に入社してよかったこと
  • ソフトウェアエンジニアから営業職をやってよかったこと
  • 辞めた理由
  • 悩んだこと

という話を書きます。

Disclaimer

私が所属していたのは会社でいうとグーグル・クラウド・ジャパン合同会社になります。Google は非常に大きい会社で、本記事はあくまでも一事業部に所属した一人の退職エントリです。

また、時期的に近いですがレイオフとは無関係です。

Google Cloud で何をしたか

2020 年 1 月に入社して 3 年半 Google Cloud のカスタマーエンジニアをやっていました。カスタマーエンジニアはプリセールスエンジニアとも呼ばれるロールで、Google Cloud をお客さんに使ってもらって売上を増やすことが責務です。つまりは営業職です。

その中で日本の大手製造業を担当するチームの一員として、日本に住んでいれば誰でも名前を聞いたことがあるような会社を複数担当しました。担当したお客さんや営業メンバーの特色もあり、カスタマーエンジニアチームの中では活動内容の営業色が強いようなチームだったと思います。

カスタマーエンジニアとして具体的には次のようなことをやりました。

  • スライドを使った Google Cloud の紹介、各プロダクトの紹介、事例紹介など
  • 事業内容、ビジネス課題、技術課題などのヒアリング
  • ソリューションやアーキテクチャの提案
  • PoC 計画立案、プロジェクトのスケジュール管理、ミーティングのファシリテーションなどのプロジェクトマネジメント
  • アーキテクチャレビュー、Q&A、トラブルシューティングなどの技術支援
  • ハンズオンやプロトタイピングなどのワークショップの準備・実施
  • 社内の各種調整

書いていないことも含めると本当に様々なことをやったと思います。また、こうした営業活動以外にもサイドプロジェクトとして次のようなことをやりました。

  • 社内用ツールの開発・運用
  • 社内のデータ分析・可視化
  • ブログ記事の執筆
  • Google Cloud 関係の OSS への貢献

2022 年から最終出社日 (farewell message 投げながらワークショップしてました) までは TAP (Tech Acceleration Program) を中心に活動していました。TAP は 3 日間のワークショップで、お客さんのビジネスをヒアリングして課題やユースケースを明確にすることから始まり、その場でアーキテクチャを検討し、実際に動作するプロトタイプを構築します。TAP に関しては製造業チームでのリードやプログラム自体の運用改善をしていました。ワークショップ中にはファシリテーションをしつつ瞬時に最適なアーキテクチャを導き、アジェンダを動的に最適化して、瞬発的なデバッグをすることが必要でした。この活動が最も自分の良さを発揮できていたと思います。

Google に入社してよかったこと

所属は日本のクラウドチームでしたが、福利厚生や各種制度、社内ツールなどは Google Japan や Google 本社と同じでした。3 年半と長くはない期間でしたが、Google で働いてみてよかったことはたくさんありました。いくつか紹介します。

  • Google と言えば、という良さ。Google と言えば働きたい企業ランキング上位で、多くの人が働きやすく待遇が良いというイメージを持っていると思います。その点はイメージ通りでした。世界最高の会社の 1 つなんだろうと思います。報酬は高く、福利厚生は充実していて、オフィスはオシャレで機能的、サラリーマンとしては最高の環境で働くことができました。
  • 優秀な同僚が多い。びっくりするほど同僚が優秀で、みんな尊敬できる人たちでした。多くの同僚に共通して感じたことは、しっかりと会話ができ、難題を解決するために思考し自発的に行動し、向上心があるという点です。これがベースにあり、さらにそれぞれが専門性を持っています。彼ら彼女らと出会って一緒に仕事ができたことは本当によかったと思います。
  • Google の技術はすげぇ。Google の技術はやっぱりすごいです。Google Cloud の中身もすごいです。それらの技術を知ったり触る機会があったのは最高にエキサイティングでした。
  • DEI。Google は DEI (Diversity、Equity、Inclusion) に非常に力を入れています。Google に入社するまであまり意識することはなかったのですが、社会にとって大事な要素だと考えるようになりました。

営業職をやってよかったこと

ソフトウェアエンジニアとしては得られなかったであろう貴重な経験ができました。

最も良かったと感じているのは「ヒトを動かす」ことを明確に意識できるようになったことです。3 年以上やってみて営業はヒトを動かすことが仕事だと考えるようになりました。Win-Win の結果を達成するために社外と社内のヒトを動かす過程をデザインし、地道にコツコツ実行し、良い人間関係を構築して、背中をひと押しする、それが営業で大切なことかなと。ソフトウェアエンジニアの仕事がソフトウェアを作って動かし続けることだとすると、営業の仕事は人間関係を作ってヒトを動かし続けることです。

このヒトを動かすというのは考えてみればソフトウェアエンジニアにとっても重要です。今まで無意識にやっていた部分はありますが、意識できるようになったことでより大きな成果を出せるような気がしています。

他にも良かったことがあります。例えば、様々なお客さんと会話し、様々なビジネスを知り、関われたことは非常に良かったです。視野が広がったのはもちろん、日本はこの人たちがこうやって支えていたのか、と聞いていてワクワクすることもありました。営業といえば気難しいお客さんを接待して何かあれば平謝りするみたいなイメージがありましたが、実際はいいお客さんが多く、楽しく建設的なディスカッションもできました。

また、そんな名実ともに日本を支えているお客さんの役に立つことで、日本という国の役に立っていると実感することもできました。特に TAP は内製化支援がテーマであり、日本の GDP の 20% を占める製造業の内製化を進めることで大きく日本に貢献できる可能性があると考えています。まだまだ道半ばでこれからというところではありましたが、その活動の立ち上げに大きく貢献できたことは誇りです。

辞めた理由

辞めた理由は大きく 2 つです。1 つ目はソフトウェアエンジニアに戻るため。2 つ目はレイオフの影響で社内異動が難しくなったためです。

入社エントリ にも書いていますが、入社したときから 2、3 年やってみて次のキャリアを考えるというのは決めていました。そして考えた結果、ソフトウェアエンジニアとして再度チャレンジすることを決断しました。

その理由としては、カスタマーエンジニアではソフトウェアエンジニア的なスキルがほとんど伸びないからです。Google Cloud の幅広い知識や社内のコネクションを活かした対応力は向上したかもしれませんが、自分自身のソフトウェアエンジニアとしてのスキルは入社時に比べてむしろ下がっています。自分のカスタマーエンジニアとしての強みはソフトウェアエンジニアのスキルがベースにあったので、この 3 年半はまさに貯金を切り崩している状態でした。

ソフトウェアエンジニアがやりたいのであれば Google 社内でポジションを探せばいいのでは、という疑問はまったくそのとおりで、社内のソフトウェアエンジニアのポジションも探していました。それと同時に、スタートアップの混沌の中で物事を解決していくのも好きだったので、社外でも色々と話を聞いていました。

そんな中、社内のちょうどいいポジションを見つけて応募しようとレジュメを書いているときにレイオフがあり、そのポジションはなくなり、採用も全社的にストップしました。今回のレイオフは本当に何もわからず、第 2 波がある、来月採用が再開する、いや採用は 1 年後になる、などいろんな噂があり、先行きが全く見えず社内異動のモチベーションもなくなってしまい、社外への転職一本に絞りました。

とは言え転職先を妥協したということはまったくなく、ここに行きたいと思える会社からオファーをいただけたのは本当に良かったです。

悩んだこと

Google を辞めるかどうかは本当に悩みました。早くソフトウェアエンジニアとしてのキャリアを再出発させたい、次の会社でチャレンジしたいという気持ちは強かったのですが、とにかく手放すものが多かったです。高い待遇、福利厚生、世界最高のオフィス、おしゃれで美味しい社内食堂、優秀な同僚、社内の便利ツール、Google の素晴らしい技術、英語環境、DEI と心理的安全性が前提の環境、これらを手放す必要がありました。オフィスに行って美味しいランチを食べたり、これから Vest される株の金額を見るたびに辞めたくない気持ちが高まるということを繰り返していました。離職率に悩んでいる会社はぜひ参考にしてください。本当に効果があります。

話が逸れましたが、ぐだぐだ悩んでいる中オファーをもらい決断を迫られました。そんなとき、スプラトゥーン 3 のゼルダの伝説コラボフェスが始まりました。

そのときのマンタローのセリフがこちらです。

Big Man 1 Big Man 2

悩んでいたときにフェスというライブ感のあるイベントでこれを見て、割とガチで心に響いて辞めることを決意しました。自分のスキルやキャリアの停滞を感じていたところでもあったので勇気を持って前に出ようと。

今では僕の座右の銘は「エイエイエイ!エイ!」です。

ちなみにティアキンはまだクリアできていません。

おわりに

3 年半、comfort zone から抜け出し慣れないことに挑戦してなんとかやりきった自分を褒めたいです。本当によく頑張った。一緒に僕のことを褒めてくれる方は こちら からお願いします。

読み返すまですっかり忘れてたんですが 入社エントリ では次のような意気込みを書いていました。

やるからには本気でやります!💪 🔥

今はまだ何もやってないのでカスタマーエンジニアって名乗るのに抵抗があるんですが、早く何か成し遂げて自信を持って名乗れるようになりたいです。

向いてなかったらソフトウェアエンジニアに戻るとは書きましたが、数年はやってみようと思ってます。もしやめるとしても、カスタマーエンジニアやってましたと堂々と言えるようになっていたいです。

3 年半経った今、胸を張ってカスタマーエンジニアやってましたと言えます。

3 年半の間、いつも助けてくれて相談に乗ってくれたカスタマーエンジニアのメンバー、一緒に苦労し這いずり回った営業のメンバー、同期入社でサポートし続けてくれたマネージャー、そして Google Cloud を使って何かを成し遂げようと一緒にチャレンジしてくれたお客さんの皆様、みなさんのおかげで貴重な経験をさせていただき成長することができました。本当にありがとうございました。Google Cloud に入社してカスタマーエンジニアができてよかったです。

次もがんばるぞい💪 🔥